帯状疱疹後の神経痛と はり治療

2019.01.21

福山市 千田町鍼灸接骨院の桒田です。

 

帯状疱疹は、子供の頃にかかった水疱瘡(みずぼうそう)の
ウイルスが、水疱瘡が治った後も神経の通り道である「神経節」
といわれる部分に潜んでいることがあり、加齢やストレス、
疲労や病気などで身体の抵抗力が落ちた時に勢いづいて悪さを
始めることによって起こります。
 
神経の支配領域に沿ったエリアで紅斑(皮膚が赤みを帯びる)・
水泡の形成がみられ、その部分に強い痛みを感じることが
一般的です。
 

 
今は良いお薬もあり、帯状疱疹自体は早めに治療を始めれば
問題なく治ることが多いのですが、
一定の割合(特に高齢の方や初期症状が激しかった方、
治療開始までに時間を要した方など)で神経痛を残してしまう
ことがあります。
 
「焼けるような」とか「刺すような」という表現がされるように、
かなりつらい痛みが数カ月~数年、人によっては生涯続くことも
あるそうです。
 
帯状疱疹自体が治ったのちも半年以上神経痛が続く場合
「難治性帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、治すことが難しい
状態となるようです。
 
こうなると、お医者さんでは痛み止めのお薬やブロック注射
などで痛みに対する対症療法がおこなわれるのですが、
効果が十分に出ないケースや、副作用で長期間お薬を飲み
続けることができない方もおり、
つらい痛みを我慢しながら日常生活を送らざるを得ない
場合もあります。
 
当院ではこのような方からご相談があった場合、
治療の選択肢の一つとして鍼灸治療をお勧めしています。
 
もちろん、鍼灸治療ですべての方の帯状疱疹後の神経痛を
完全に良くすることができる訳ではないのですが、
こういった症状で当院に来られた方のかなりの割合で
症状の改善がみられるように思います。
 
仮に半分の方に効果がみられたとしても、
その方々のほとんどは既に医療機関での治療を受けた
にもかかわらず十分な効果が出なかった方々なので、
全体から見るとその有効性はかなり高いのではないかと
自負しています。
 
 
できれば「難治性帯状疱疹後神経痛」となる前の段階
(帯状疱疹の発症後1か月~3か月以内)で、
医療機関での治療と鍼灸治療を併用することで
「難治性」に移行することを食い止めることができれば、
症状の改善率が大きく上がるというデータもあります。
 
参考にした文献では、「帯状疱疹発症後、2週間以内に
鍼灸治療を併用した場合には完治・略治(日常生活に
支障のない程度まで症状が落ち着くこと)の率は90%
であるのに対し、6カ月を超えた場合には10%まで
低下する」とのことでした。
 
鍼灸治療の併用を早い段階で始めた方は、比較的少ない
治療回数で明確な効果が出やすいのに対し、
併用が遅かった方は治療期間も長期にわたり、
なかなか効果が出にくいようです。
 
帯状疱疹後神経痛は50歳代の発症から難治性となる率が増し、
70歳を超えるとその割合は極めて高くなるとの報告もあります。
 
高齢化社会となり、このようなつらい状態に陥ってしまう方も
増えていくと思われます。
 
自身や周囲の方々の治療法の選択肢の一つとして
「鍼灸治療」も頭の片隅に置いておくのも良いのではないかと
思います。
 
 
 
※参考文献
【明治鍼灸大学 鍼治療により著明な改善を認めた難治性帯状疱疹後神経痛の1例 1990】
http://www.meiji-u.ac.jp/research/files/shinkyuigaku6_69.pdf#search=’%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9%E5%BE%8C+%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%97%9B+%E9%8D%BC%E7%81%B8′